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〜スバエクとは

カンボジアの伝統影絵芝居「スバエク」

 
カンボジアには、古くから伝わる影絵芝居があります。野外にスクリーンをたてかがり火やライトを灯し、なめした牛の皮で作った人形を遣い、語りと音楽を合わせて演じるお芝居です。この影絵芝居はクメール語(カンボジア語)で、「スバエク」と呼ばれています。スバエクという言葉は、通常「(人や動物の)皮、皮膚」を意味する言葉として使われるのですが、影絵芝居は牛の皮で作った人形を使うので、こう呼ばれているのです。
「スバエク」は、上演形態や人形の特徴で3つの種類にわけられます。

スバエク・トム
 縦1.2m横1m以上もある大きな人形を150体余りも使って演じる、「大型影絵芝居」です。スクリーンの裏方にかがり火を焚き、その光に人形の影と、遣い手の影を映し出すという大がかりなものです。

 スバエク・トムの「トム」は、「大きい」という意味です。大きな皮、という名のとおり、まるごと剥いだ牛一頭ぶんの皮に登場人物と背景を彫り込んだ、大きな「絵」のようなものを操ります。舞台となるスクリーンも、高さ4m、幅10mと特大です。スクリーンの後ろではココナツの殻を燃やし、大きなオレンジ色の炎を作って光源にします。その揺らめく光に、人形と、人形を操る遣い手の影を映し出すのです。この演技に、打楽器を中心とする古典音楽と、韻文と散文を組み合わせた「語り」が加わり、物語を紡ぎだされます。
 演目は、『リアムケー』という物語からとったエピソード。『リアムケー』は、インドで大昔に作られた大叙事詩『ラーマーヤナ』がカンボジアに伝わってできた物語です。大筋は『ラーマーヤナ』と同じですが、カンボジア人の好みや風習が取り入れられていて、カンボジア独自の物語となっています。
 スバエク・トムはもともと、大きな祭りや仏教行事があるときに行われるお芝居でした。現在では、祭りに影絵芝居を行うという習慣がほとんどなくなってしまい、観光のお客さん向けに行うことが多いのですが、それでも演技が始まると、その場全体が荘厳な雰囲気に包まれます。
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(つづき)

スバエク・トーイ 

 手足の動かせる小型の人形を使い、小さな芝居小屋で演技をします。即興のせりふとコミカルな動きで人びとを笑わせる、庶民的な影絵芝居です。

 スバエク・トーイの「トーイ」は、「小さい」という意味です。人形は40〜60cmほどの小振りなもので、手足や口が動かせるように持ち手や糸で細工をしてあります。王子や王女のほか、水牛や獅子などの動物や道化など、コミカルな役柄がたくさん登場します。幅3mほどのスクリーンを張った小さな高床式の芝居小屋を野外に建て、遣い手はその小屋の中に入って演じます。観客は小屋の前に集まり、スクリーンを見上げるような感じで見ることになります。演じる物語は冒険ものが多く、戦いあり恋愛あり、笑いもふんだんに織り込まれているので楽しく見ることができ、庶民の間では昔もいまも親しまれています。スバエク・トムのように語り部が別にいるのではなく、遣い手が、それぞれ自分が遣う人形の台詞を即興で作り出してやりとりします。遣いの技術よりも、即興の会話術が芝居のおもしろさを決めるポイントです。

スバエク・ポア
 実は、これは「影絵芝居」とは違うものです。人形は牛の皮で作られていますが、あまり細かい彫り込みはなく、代わりに鮮やかな彩色が施してあります。

 スバエク・ポアの「ポア」は「色」を意味します。登場人物に背景も入れた図柄を「人形」として使うところはスバエク・トムに似ていますが、彫りの部分は少なく、顔の表情や衣装の模様など細かなところは、鮮やかに彩色して表しています。光をあてて影を見せるのではなく、昼間に人形劇として演じられていたものです。「影絵芝居」とは別に、「皮人形芝居」といったほうがよいかも知れません。
 スバエク・ポアの起原についても、はっきり情報はないのですが、内戦以前にはプノンペンの王宮の中でだけ行われていたようです。現在、上演されることはほとんどありません。

(このホームページでは、主にスバエク・トムについての情報を中心にお伝えしてゆきますが、スバエク・トーイとスバエク・ポアのこと、また、他の伝統芸能についての情報も少しずつ載せてゆきたいと思います)


スバエク・トム


スバエク・トムの光源


スバエク・トムの実演


スバエク・トーイ


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