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リアム・ケー物語とスバエク・トム 

『リアム・ケー物語』のあらすじ
 その昔、アヨティヤー国のトッサロット王には3人の妃がおり、それぞれの妃には息子がいました。第一妃の息子リアムは王位を継ぐはずでしたが、自分の息子を王位につけたいと願う第二妃の陰謀により、14年の間アヨティヤーの国を追われることになってしまいました。リアムは妻のセダーと弟のレアック(第三妃の息子)とともに国を去り、森での生活を始めました。
 ランカー島を統治する魔王リアップは、森でセダーの姿を見かけてその美しさに惚れてしまいました。そこで、手下の魔物に手伝わせてセダーを連れ去り、ランカー島の庭園にたてた御殿に幽閉してしまいます。リアムとレアックはセダーを追いランカー島へ向かいます。神の力を備えた白猿のハヌマーン、猿の王ソクリープらを味方につけて魔物たちを倒し、ついにはリアップを倒し、リアムたちはセダーを取り戻してアユティヤーの国へと凱旋します。そして、王位につくことを拒み兄の帰郷を待っていた弟ピロットに代わり、リアムはようやく王位につくのでした。

スバエク・トムで演じられる部分は・・・
 スバエク・トムで演じられるのは『リアム・ケー』のすべてではなく、ランカー島に渡ったリアムの軍が魔物たちと戦いを繰り広げる部分のみです。その中でも中心となるのは、リアップの息子アンタチットと、リアムの弟のレアックの戦いです。これを七夜にわけて演じ、最後にアンタチットが命を落とし神の国へ還されるところでスバエク・トムの演技は終了します。


<プログラム>
1.ソンペア・クルーの儀式
 物語の演技に入る前に、必ず「ソンペア・クルーの儀式」を行います。「ソンペア・クルー」というのは、「手を合わせて師を拝す」という意味です。ノリエイ神(ヴィシュヌ)、アイソー神(シウ゛ァ)、仙人の人形をスクリーンに立てかけ、バナナの木と葉で作った供え物や聖水を用意し、音楽を演奏します。芸能を司るプスヌカーの神を始めとして、森や山を守る神々に祈りを捧げ、芸能を伝えてくれた代々の師に敬意を表し、そして、よい演技をさせてくれるようお願いするのです。

2.2匹の猿の戦い
 「ソンペア・クルーの儀式」に続く一幕です。登場するのは、仙人とその弟子たち、白猿と黒猿です。
 白猿は、人の畑を荒していた黒猿を見つけ、争ったすえに後ろ手に縛りあげて仙人のところへ引き立てていきます。仙人は二匹に説教します。黒猿には「悪事を捨てて正しいことを行い善の道に進みなさい」と、そして白猿には「黒猿を許して自由にしてやりなさい」と。「毛色が違ってももとは兄弟なのだから、助け合い教えあって生きなさい」と諭すと、猿たちは仲良くしあうことを約束し、帰って行きます。
 2匹の猿の戦いと和解を表すこの一幕は、この世の不運やもめごとが消え去るようにという願いを表しています。
 *観光客向けの公演など時間的な問題があるときは、この一幕は短縮、あるいはカットすることもあります。

3.本章
 ここで、七夜にわたって行われるスバエク・トムの一夜ごとのあらすじを簡単に記します。
 *初めて影絵を見る方々に披露するときには、物語がテンポよく進み、戦いの場面や嘆きの場面などわかりやすい動きを含んでいる「レアックとアンタチットの戦い」「コンパンの戦い」「蛇の矢」の章を演じることが多くなっています。


主な登場人物
(カッコ内はインドのラーマーヤナでの名前です)
リアム王子(ラーマ)
アユティヤーの国の王子
レアック王子(ラクシュマナ)
リアムの弟
セダー(シータ)
リアムの妻。リアップにさらわれランカー島の庭園に幽閉されている。
ピペーク(ビビシャナ)
リアップの弟。リアップの暴挙に耐えかねてリアムの側 へつき、占い師 としてリアムの片腕となる。
ハヌマーン(ハヌマーン)
リアムに仕える猿の将官
ソクリープ(スグリーヴァ)
リアムに仕える猿の将官
オンコット(アンガダ)
ソクリープの甥。同じくリアムに仕える。
チュンプーピアン
リアムに仕える猿の将官
リアップ (ラーヴァナ)
ランカー島を治める魔王。10の頭と20本の頭をもつ。
アンタチット(インドラジット)
リアップの長男。兄弟の中でもっとも力が強い。
 

<第一夜 レアックとアンタチットの闘い>

  リアム王子は猿の兵士たちに命じてランカー島に橋をかけさせ、いよいよ魔王リアップたちに闘いを挑む用意を進めました。リアムはまず猿の将官チュンプーピアンにランカー島を偵察させます。
 人間たちと猿の軍が侵入してくるのを見つけた見張りの魔物は、大急ぎでリアップのところへ注進に走ります。リアップは長男アンタチットを呼び、人間たちの侵入を防ぐように命じました。アンタチットは兵を率いて戦場へ向かい、そこれ両軍による壮絶な闘いが始まります。しかし、魔物たちは猿の兵士の獰猛さに歯がたたず、アンタチットもレアックとの一騎打ちで形勢不利となり、都へと逃げ帰ります。 
 気の収まらないアンタチットはリアップの許しを得て、魔力を備える「蛇の矢」を得るために精神修行に出て行きました。ノルーチャンテという大木の下に着くと、アンタチットは修行の場を美しく整えるよう兵士たちに命じます。場が掃き清められ座布団や天蓋が整えられると、アンタチットはひとり静かに、七日間と決められた修行に入りました。

<第二夜 ポンニャカーイ、セダーの亡骸に化ける>
 魔王リアップは、リアム王子の戦意を喪失させる策略として、姪のポンニャカーイを使うことを考えます。ポンニャカーイの父親はピペーク、つまりリアップの弟ですが、リアップの暴挙に耐えかねてランカーを離れリアム王子の側についています。父親が敵方についたことで、ポンニャカーイは牢に閉じ込められていました。
 牢から出されたポンニャカーイは母とともにセダーに会いに行き、その姿をしっかりと目に焼き付けます。そしてセダーの死んだ姿に化け、海を漂い、リアム王子の陣地近くまで流れてゆきます。水浴に出ていたリアム王子は、セダーがほんとうに殺されたものと思い、嘆き悲しみます。しかし、ハヌマーンやソクリープたち猿の将官には、この死体が本物のセダーとは思えません。そこで、死体を燃やして何が起こるか試したいとリアムに申し出ます。
 果たして死体を火葬すると、ポンニャカーイは熱さに絶えかね空へと逃げ出しました。ハヌマーンはこれを追いかけ捕まえます。捕らえたポンニャカーイを詰問するとピペークの娘だと言うことがわかり、リアムは彼女の縛めを解いてやります。ハヌマーンはポンニャカーイをランカーの都まで送ってゆく役を言いつけられますが、途中で恋心を抑えられずポンニャカーイにせまります。夫婦となることを誓ったふたりですが、お互い敵味方の身の上。将来を誓ったのち、ハヌマーンはリアムの陣地へ帰り、ポンニャカーイもひとりとぼとぼと都へ帰ってゆくのでした。

(ページの右上に続く)


(つづき)
<第三夜 蛇の矢>

 アンタチットは、「蛇の矢」を得るため大木の下で精神修行をしていました。そこにリアム王子に命じられた猿の将官チュンプーピアンが大熊に姿を変えて現われ、修行の邪魔をします。アンタチットは修行をあきらめ魔王リアップのところへ戻ります。ランカー国の将来を憂うリアップに、アンタチットは自分の身代わりをたてる策略を提案しました。手下のヴィロルモック・コマーを自分と同じ姿に化けさせてレアックと戦わせ、自分は雲の合間に隠れ、機を見て矢を放ちレアックをしとめようというのです。ヴィロルモック・コマーはアンタチットとそっくりな姿に身を変え、軍を率いて戦場へと向かいました。
 一方リアムは占い師ピペークの指南を受け、レアックに軍を挙げさせます。戦場についたレアックは、ヴィロルモック・コマーを本物のアンタチットと思い込み、ふたりの一騎討ちが始まりました。空の上で様子を伺っていたアンタチットが矢を放つと、その矢は無数の蛇となり、レアックや猿の兵士たちをぐるぐる巻きに絞め上げてしまいました。
 ピペークの知らせを受けて戦場へ向かったリアムは、レアックたちの姿を見て嘆き悲しみます。ピペークは鳥の王クルットに助けを乞うことを助言し、リアムは文をしたため矢尻に留め、クルットの住む都へと放ちました。クルットはすぐさま飛んで来て蛇に襲いかかり、レアックたちを救い出します。クルットは自分の都へ帰り、リアムは息を吹き返したレアックと猿の兵士たちを引き連れて自陣へと戻って行きました。<第4夜 コンパンとハヌマーンの戦い>
 魔王リアップの息子アンタチットはリアム王子を倒す力をつけようと、修行のために山へこもりました。その間にリアップは甥のコンパンを呼び、リアム王子との戦いに出るよう命じます。コンパンは象に乗り、大勢の兵を率いて戦場へ向かいます。
 戦場から響いてくる鬨の声を聞いて、リアムはコンパンが現れたことを知ります。リアムは、ハヌマーンに軍を率いて戦いに向かうよう命じます。戦場で向かい合う両軍の兵士たち。魔物と猿たちの戦いがあり、そしてハヌマーンとコンパンの一騎打ちが始まります。ハヌマーンはコンパンを足で踏みつけ、手にした剣で胸を一気に突きコンパンを殺しました。
 ハヌマーンは兵たちを引き連れ、意気揚々と陣地へ戻って行きました。

<第5夜 プロムミアの矢>
 魔物コンパンが死んでしまったため修行を中断して戦場へ向かうことになったアンタチットは、リアム王子の軍を欺くためにインドラ神に化け、他の魔物たちも天女や神々の姿に化けました。
 いっぽう弟王子のレアックはリアムに命じられ、兵を率い戦場へと向かっていました。途中インドラ神に迎えられ「おまえたちの勝利を祈り、天女の舞を捧げよう」と言われると、レアックはこれを信じ舞に見とれてしまいます。インドラ神に化けたアンタチットは隙を狙い「プロムミアの矢」を放ちました。レアックの胸を貫いた矢は、矢尻を地中深く、矢羽を枝葉にして空に届くほどに伸びてしまいます。怒ったハヌマーンがインドラ神にとびかかりますが、弓で殴られ気絶してしまいます。
 見張りの猿から知らせを受けたリアムは戦場へ赴き、倒れたハヌマーン弟の姿を見て悲しみのあまり卒倒してしまいました。  
 そのころ占い師ピペークは、猿たちを連れて森を散策していましたが、急を感じ取り戦場へ向かいます。そこで倒れたハヌマーンを発見しました。ピペークの術で息を吹き返したハヌマーンは、一部始終を語りました。ハヌマーンに案内されて、ピペークたちは倒れたリアムたちを見つけます。息を吹きかえしたリアムは、ピペークの指示のもとに、レアックの身体から矢を抜くために必要なものをハヌマーンに準備させます。薬草、牛の精液、石の硯、そして日の出を遅らせること。準備が整うとピペークは薬を調合し、レアックの身体に塗って矢を取り除きました。リアムは安堵し、レアックや猿たちを引き連れ自陣へと戻って行きました。

<第6夜 ソカチャーの遺言>
 次の策略としてアンタチットは、ソカチャーという名の魔物をおとりに使うことを魔王リアップに提案します。ソカチャーはリアップの甥ですが、争いを嫌う魔物で、かつて命じられた戦闘を拒否して以来、ずっと牢につながれていました。
 牢から出されたソカチャーは、セダーに化けてアンタチットとともに戦場へ向かうことを命じられます。生きて帰れないことを覚悟したソカチャーは、妻子に別れを告げるため自分の館へ寄ります。命令に抗えない我が身を嘆き、愛する妻との別れを悲しみ、妻と子の行く末を案じて泣きながら、ソカチャーは館を出てゆきます。妻は追いかけてすがりつきますが、ソカチャーは妻を館に戻し呪文で鍵をかけてしまいます。
 セダーに会いに行きその姿を目に焼き付け、そしてソカチャーはセダーに化けます。アンタチットはこの偽のセダーを戦車に乗せて戦場へ向かいました。
 一方リアム王子は、弟のレアックを戦場へ向かわせます。戦場でセダーの姿を見て驚くレアックにアンタチットは、セダーを返してやるから引き取れといいますが、レアックはその申し出を拒否します。返すなら兄の陣地まで来て直々に渡せ、そうでないなら戦うだけだと言ってしまうのです。セダーに化けたソカチャーも、必死で引き取ってくれと懇願しますがレアックは受け入れません。それなら首を持ってゆけ、と言ってアンタチットはセダーの首を切ってしまいました。呆然とするレアックたちを尻目にアンタチットは戦場を後にし、さらなる修行のため山へ入ってしまいました。
 レアックたちの報告を聞いておどろくリアムですが、占い師ピペークは、それが偽のセダーに違いないと言います。果たして猿の兵士が調べに行くと、それが偽物であることがわかりました。ほっとする間もなくピペークは、アンタチットの修行をすぐに阻止しなくてはならないこと、アンタチットを倒すために「千の矢」を持っていくことを助言します。レアックは「千の矢」を携え猿たちを率い、アンタチットがこもる山へと向かいました。

<第7夜 千の矢/アンタチットの遺言>
 アンタチットが修行をしている山に、レアックやハヌマ−ンたちが攻め込みました。アンタチットはチャクラという輪を投げて暗雲を作り出し身を隠しますが、レアックが闇に向かって矢を放つとそれは千本に分かれてアンタチットの身体に突き刺さりました。アンタチットは痛みにのたうちまわりながら、母のもとへと逃げて生きます。母のお乳を飲ませてもらえば矢が抜けるのです。アンタチットの哀れな姿を見て、母は嘆きながらお乳を与えてやります。そして、もう戦いなどやめて穏やかな生活をするようにと諭すのですが、いまさら止めるわけにはいかないとアンタチットは耳を貸しません。母のもとを去ったアンタチットは、妻子に別れを告げに行きます。
 アンタチットは妻子を抱き寄せながら、滅び行くランカーを憂い、その景色を慈しみ、戦場で死ぬ運命にある我が身を嘆き、ふたりの妻と子どもの行く先を案じ、悲しみのうちに館をあとにします。追いすがる妻を押しとどめ、アンタチットは父である魔王リアップの命令のもと、軍を率いて戦場へ向かいました。
 リアム王子の側では、アンタチットがこの戦いで死ぬ運命を占い師ピペークが見抜いていました。ピペークの助言で、リアム自らも戦場へ向かいます。リアムの姿に恐れをなしたアンタチットは、再びチャクラを投げて闇に隠れてしまいました。ピペークはリアムに、矢を放てばアンタチットに当たるが、その首が落ちると大地すべてが燃え尽きてしまうことを告げます。リアムは猿の将官オンコットに、プロム神のもとへ行きアンタチットの首を受けるための器を授かってくるよう命じます。オンコットが無事に器を持ち帰ると、リアムは矢を放ちます。アンタチットの首が落ちると、オンコットがすかさず器に受けてリアムに捧げ、リアムはさらに矢をもってその首を天界へ送ってやりました。
 見張りの兵から息子アンタチットの死を知らされた魔王リアップは、激しく泣くのでした。


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